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世界で暮らす仲間たち1 from Sweden
犬と猫のいる風景

Rikako Fujita

藤田りか子

動物ライター、翻訳家、生物学修士。学習院大学を卒業後、オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物学科を卒業。現在はスウェーデンで犬、猫、馬たちと暮らしながら、動物行動学やトレーニングについての執筆を続けている

2011年02月17日 [木]

犬が猫を追いかけるのは狩猟欲が刺激されるから

犬と猫。トムとジェリーの漫画を見ていた方なら、ブルドッグの〝スパイク?ことブルおじさんが、猫のトムを追いかけるシーンはおなじみであろう。果たして、世間一般に信じられているように、犬と猫というのは、相容れない仲なのだろうか?

いやいや、猫と犬をいっしょに飼っている人は、たくさんいる。私もそんな飼い主のひとり。友人の猫などは、同居している犬のお腹のところで暖を取って寝るぐらいだ。そう、いっしょに飼っても、必ずしも「犬猫の仲」になるとは限らない。ゆっくりと猫と犬を社会化訓練させることで、同居は十分に可能である(もちろん不可能な場合もある)。

しかし家では猫と仲良くしている犬が、突如、外で出会う猫を追いかけようとするのも事実だ。

何故?

ブルおじさんみたいに、犬は猫に対して怒りを感じているから、追いかけるのではない。これはひとえに犬は生まれつきのハンターだから。外の猫は、犬に慣れないあまり、姿を見れば、すぐに逃げようとする。肉食動物の常として「逃げる」という行動に、もともとある狩猟欲が刺激されてしまう。これは猫とて、同じ。小さなねずみがチョロチョロしていたら、狙いをつけずにはいられない。

犬とうまく付き合える猫。猫とうまく付き合える犬

犬とうまく渡り合える猫というのがいるが、このタイプは割合肝がすわっていて、犬が近づいてきても、逃げる動作を行わない。我が家にも、かつて3匹の猫と2匹の犬が同居していた。犬と一番仲良くできたのは、犬が近づくと、すぐさま尻尾をピンと立て、体をなすりつけ、きちんとご挨拶にお付き合いするタイプ。そして、どうも仲良くなれないのは、犬のアプローチとともに、やっぱりすぐに逃げ出してしまう「弱虫」猫であった。逃げるからやっぱり追いかけられる。

犬といっしょに育ってきた猫は、前者の猫のように、犬の狩猟欲を刺激しないよう、行動をうまく制御するようだ。

一方で、犬の中でも猫とうまく付き合えるコ、付き合えないコがいる。狩猟欲の強い犬、たとえばサイトハウンド(グレイハウンドやウィペット等)やテリアは、子犬のときから猫と育っていないと、導入させるのが難しいことがあるだろう。

ただし狩猟犬種のすべてが、猫に危ない犬とは限らない。レトリーバー種などは狩猟犬といっても、撃ち落とされ「生きていない」鳥を回収するのに使われた。だから、中には追いかけたい欲が強い犬もいるけれど、上手に慣らせばうまくいくことは多い。ボーダー・コリーやシェパードなど牧羊犬も、羊を追うのが本業なので、やや危ない範疇に入るが、一方で命令によく反応する。これも訓練次第でOKだろう。

狩猟欲があまりないのは、超大型犬だ。たいていのんびりしているから、行動の予測がしやすい。猫は安心して、あまり怖がることはない。我が家にかつていたレオンベルガーという超大型犬も猫といっしょに隣同士でよく寝ていたものだ。

初めて犬と猫を対面させるときは

初めて猫を犬に対面させる際は、まず家の中でゆっくりと時間をかけて。できるなら犬にはリードをつけよう。猫が逃げ出したときに、追いかけ行動を阻止させるためだ。それから、猫が避難できるように、必ず逃げ道をつくっておくこと。そしてぴょんと上れる高い場所を設けてあげる。高いところにいると、猫は安心するものだ。

犬が猫に対して無関心になるまでは、絶対に人間の監視のもとで、同居させること、そしてもし家を留守にする場合は、ドアを閉めて、犬が入ってこないよう猫の安全を確保してあげる。

2種を互いに慣らすのに、どれだけ時間がかかるか。これは個体差による。しかし長期戦は覚悟で! 早まってしまうと、犬はやっぱり耐えられず猫を追いかけようとする。せっかくここまで慣らしてきたのに、今までの努力は水の泡に。猫はトラウマに陥り、いつまでたっても犬を怖がり続けてしまう。そして一生逃げ続けなければならなくなる。と、犬は、逃げるから余計に面白がって追いかける。

猫も生粋の狩猟家だから、ときどき家の中で狂ったように、走り回ることがあるだろう。床に落ちている小さなごみを獲物にしたてて、飛び回ることもある。こんなときも、犬が猫の動きに反応しないように、よく注意をしておこう。

最終的に、犬と猫がいっしょに寝るぐらい両方が仲良くなってくれれば、それは理想。しかし、たいていは互いの存在を認めながら、適当に距離をとって暮らしているもの。なので究極に仲良くなれないからといって、がっかりしないように。いずれにしても、2種を同時に飼うというのは、たくさんの喜びをもたらしてくれるはずだから!

写真・文/藤田りか子
photo&text:Rikako Fujita