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殺処分のない国・ドイツに学ぼう。vol.1
犬を迎え入れる準備ができたら動物ホームに行こう!

Chiho Ono

小野千穂

中近東、中国、米国、カナダを経て、現在、ドイツ在住。翻訳家、エッセイスト。
最近の訳書に『なぜ私は、幸せではないのだろう?』がある。イギリスのスピリチュアリストが書いた『ペットたちは死後も生きている』は、ペットロスを癒す本としてロングセラーに(いずれも日本教文社刊)。
http://www.onochiho.net


『ペットたちは死後も生きている』
ハロルド・シャープ著・小野千穂訳
イギリスで約半世紀にわたって愛読されてきた、ペットたちの死後の世界に関する最も有名なエピソード集。愛情深い飼い主と動物たちの、肉体の死を超えて結ばれた深い絆を感じさせる、多くの感動的で不思議な物語が収められている

2011年02月17日 [木]

ホームで保護してファミリーを探す。それがドイツのやりかた

友人のレギナは愛犬を亡くした後、犬のいない生活に耐えられなくて、すぐに次の犬を探すことにしました。ある「動物ホーム」に小型犬が欲しいと連絡をすると、1ヶ月後、「スペインから小型犬が到着したので見に来てください」という知らせが来ました。彼女はすぐに「お見合い」をして、数頭の中から現在の愛犬ティミーを選んだのでした。

国内の犬だけでなく、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどで殺処分される予定だった犬たちを救うグループがドイツにはいくつもあり、殺処分のないドイツに連れてこられます。他にも、ルーマニアから、トルコから、スペインのカナリー諸島から……と、かなりインターナショナル。ちなみに、私が近所で出会う犬の半数以上がホーム出身です。レギナのように、「犬は動物ホームから引き取ろう!」と思う人は大勢いるのです。

「動物ホーム」はドイツ語でティアハイムと呼びます。ドイツでティアハイムと聞いてその存在を知らない人はまずいないでしょう。ドイツ中に大小合わせて800以上もあり、テレビや新聞で日常的に見たり聞いたりしますから。「動物ホーム」というように、実は、犬猫だけでなく、ウサギ、モルモット、ネズミ、鳥などの小動物のほかに、馬、ロバ、豚(!)を収容しているホームもあります。人間のペットとして飼われた動物はホームで保護して、新しいファミリーを探すというのがドイツのやりかたなのです。

首都ベルリンの「動物ホーム」はドイツ一の設備と広さで、犬500頭、猫700頭収容できます。緑に囲まれた公園のような環境で、あらゆる種類の動物が新しいファミリーを待つ間、快適に暮らせるようになっています。動物好きの市長さんが率先して、夢のようなこのホームを実現化したのだそうですが、こんな大きなホームも他のホーム同様、公金は使われておらず、寄付や会費でまかなっているのですから、またまた驚きです。

さて、ここでは、どの町にもあるようなごく一般的な「動物ホーム」で、どのように犬を引き取るか、いきさつを紹介しましょう。私は小型犬を探しているという友人夫婦に付き合って、フランクフルト近郊のホームを訪れたのでした。

犬たちは一頭ずつか、仲がよければ二頭いっしょに広々としたスペースに入れられています。十分なスペースが具体的に法律で定められているこの国では、犬が狭い檻に閉じ込められることはありません。一頭一頭に名前があります。また、なぜそこに連れてこられたかを教えてくれます。収容されている間、職員やボランティアの人たちが散歩に連れ出し、気の荒い犬には教育を行います。

もらわれた家で幸せか?そんなチェックまでします

友人夫婦は、二頭のチワワが入っている檻に入れてもらい、中に座り込んで、シルバーのやせたチワワを膝にのせて、長いこと撫でていました。その犬はフランクフルトの町なかで警察に保護されたのですが、名乗り出た人がいなかったので、ホームに連れてこられたのです。もう一頭のほうは予約済みで、老人ホームに引き取られるとのことでした。

気に入った犬をその日のうちに連れ帰ることのできるホームもありますが、必ず面接があり、数週間後には犬が幸せに暮らしているかどうかのチェックもあります。友人夫婦が訪れたホームでは、引き渡しは翌日職員が犬を連れてきて、家や環境を確認してからという念の入れようです。そして、どのホームでも決して無料ではなく、犬一頭に3万円ほど払わなければなりません。

次の日、友人は家の中を磨き上げ、「ジーンズでもいいかしら。別の服に着替えたほうがいいかも」と緊張して新しい家族の到着を待っていました。時間きっかりにやってきた職員は、家や庭を見回し、庭の柵が少しこわれて隙間があるのを見落とすことなく、「犬が出る可能性があるから修理するように」と言った後、書類をテーブルに並べました。こうして犬は家族に迎え入れられたのですが……。実はそれで終わりではなかったのです。半年後には抜き打ち検査があったのです! 幸い、合格。犬は晴れて「正式に」家族のメンバーとなり、みんな胸をなでおろしたのでした。

写真・文/小野千穂 text,photo:Chiho Ono