ニュース・その他

動物愛護管理制度の見直しに向けて
人と動物が幸せになるために

Michiyuki
Nishiyama

西山理行 環境省動物愛護管理室

1965年、神奈川県出身。
筑波大学(生物学類~環境科学研究科)で生態学を学び、「"(人間によって迷惑を被っている)人間以外の生きもの"の役に立ちたくて」環境省へ。
本省(計画課、施設整備課、自然ふれあい推進室、野生生物課)、現地(箱根、札幌、白神山地、名古屋、中部山岳、那覇)勤務を経て、2010年4月より現職

Kahoru Kanari

金成かほる トラフィックイーストアジアジャパン
プログラムオフィサー

獣医師。シンクタンク勤務を経てトラフィックイーストアジアジャパンのプログラムオフィサーとしてWWFジャパンに入局。
担当はペットとして取引される野生の生きた動物や木材、薬用植物などの取引。
ワシントン条約の適切な施行や国内の法体制の整備について情報提供や提言活動を行う

Keiko Yamazaki

山崎恵子 ペット研究会「互」

ペット研究家。ペット研究会「互」主宰。
国際基督教大学卒。
日本介助犬アカデミー常任理事、優良家庭犬普及協会常任理事、恵泉女学園大学非常勤講師。
動物に関する勉強会や季刊誌発行で、国内外の情報を集めている。
著書『ペットのしあわせ-わが家がいちばん』(青木書店)ほか、訳書多数
上・写真提供/マース ジャパン リミテッド

2011年02月17日 [木]

「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下「動愛法」)は、5年に一度の見直しに向けて、動物愛護管理のあり方を検討する小委員会が設置され、議論が続けられています。環境省動物愛護管理室の室長をはじめ、それぞれ異なる立場で委員会に臨んでいる3人に、お話を伺いました。

ペットを取り巻く問題が見えてくる

日だまりで眠る猫、飼い主の顔を見上げながら、足取りも軽く散歩している犬。そんな姿を愛おしく感じる人は多いだろう。世の中の動物はみんな幸せで、いつでも人を癒してくれているように思う。

しかし、現実はそういう動物ばかりではない。全国で殺処分された犬猫は、一年間で約28万頭(平成20年度、環境省調べ)。保健所や動物愛護管理センターに引き取られた犬猫の多くは、飼い主の転居や結婚、出産、病気、犬の問題行動といった理不尽な理由で持ち込まれ、、その後新たな飼い主が見つからなければ、殺処分されてしまう。

不幸な犬猫をなくすためには、まず飼う前に、本当に飼えるかを考えることが大切で、飼った以上はその犬や猫の一生に責任を持つことが基本だ。飼い主の意識が向上することで、殺処分数は激減するはずだが、28万頭の原因はそれだけではない。ペットの繁殖・販売業者が、売れなくなった動物を処分するために持ち込むこともある。

こうした殺処分の現状をはじめ、劣悪な環境での過剰繁殖や多頭飼育崩壊、虐待など、ペットに関するニュースが取り上げられることが増えている。

そんな中、動物愛護管理制度の見直しのため、昨年8月に「動物愛護管理のあり方検討小委員会」(以下、小委員会)が設置され、ヒアリングと議論が続けられている。「多くの課題の中でも、『動物取扱業の適正化』の問題には、『今すぐ何とかしてほしい』という要望が強いものも含まれます」
と話すのは、環境省動物愛護管理室の西山理行室長だ。

動物取扱業は販売、繁殖、展示、訓練など、さまざまな業種を含む。その課題は深夜販売・販売時間、移動販売・インターネット販売・オークション市場、犬猫幼齢動物の販売日齢、繁殖制限措置、動物の死体火葬・埋葬業者を動物取扱業に追加するかどうかの検討など、幅広い。

最初に取り上げられたのは「深夜販売・販売時間」。現在の法律には、深夜販売の時間や総展示時間などに数値的な規制がない。第2回小委員会のヒアリングでは、動物愛護団体の代表者が、「幼齢の犬猫の深夜販売は動物にストレスをかけ、睡眠時間の短縮を招くので禁止されるべき」、「アンケートの結果、90%以上の人が『20時まで』としている。数値化が必要」などの意見を発表した。

第3回小委員会のヒアリングには、午前3時まで営業している、当のペットショップ役員が出席した。深夜まで展示・販売することによると考えられる犬や猫の健康被害や死亡率などを述べた上で、「深夜営業の利便性があり、深夜に動物の容態が悪くなった場合でも的確にサポートできていると自負している」と説明。そのほか、インターネット販売、オークション、ブリーダー、ペット葬祭業、老犬・老猫ホームなどの関係者が出席し、一度ずつヒアリングが行われている。

それぞれの立場から議論百出

議論も始まった。小委員会を構成する委員は、法律、動物行動学、動物愛護、ペット業界、自治体などの専門家18名。

各課題について、まず提示されるのは科学的な知見、海外の法令などである。深夜販売に関しては、条件に合う実験データがなく、科学的知見に乏しいとしつつ、「犬や猫は長時間の睡眠を必要とする動物。長時間の展示・販売もあわせて規制を考えた方がよい」、「家族と相談して、犬や猫という家族を迎え入れようとしている人たちが、深夜の繁華街を歩いているとは思えない」等々、意見や質問が続出し、予定時間は常に超過気味だ。立場の違いが強く表れたのは「犬猫幼齢動物の販売日齢」だ。

オークションで競りにかけられているのは生後40日と、6週齢に満たない幼犬・幼猫だ。文献などによると「社会化」の適期とされるのは3〜12週齢、とくに7〜9週齢が重要と考えられている。7〜9週齢の間に入手した犬は、攻撃性や不安行動といった問題行動が非常に少ないというデータも提出された。7〜9週齢までは母親や兄弟、姉妹から離さない方がよいことに、科学的な裏付けは十分なように思われる。

しかし繁殖業者にとっては、手元に置く期間が長くなれば、手間も暇もコストもかかる。販売業者にとっては、幼齢動物が好まれる現状では、大きくなれば売れ残るリスクが高い。規制を厳しくしすぎることは、生年月日を偽るなど、法の網の目をくぐらせることにつながらないか、との危惧もあり、業者にとって実現可能と考えられる45日、あるいは7週齢、8週齢という意見が出されている。

「背景や立場が全く異なる方たちに委員をお願いしているので、多種多様なご意見をいただくことはある程度予想していました。3月頃の『中間とりまとめ』を目指して、集約に向けた議論をしていきたいと思っています」(西山室長)

撮影/田村友孝(西山室長)、取材・文/荒井明子
photo:Tomotaka Tamura text:Akiko Arai